EMC試験報告書の読み方:マージン・検波器・限度値の線
エミッション試験報告書の数値の読み方を解説します。測定値と限度値の比較、補正係数、QP・平均検波器、マージン、不確かさを考慮した判定までを扱います。
正式なエミッション試験報告書は表とグラフでいっぱいですが、合否は数列で決まります。各数値の意味、限度値の線の読み方、マージンの判断の仕方を整理します。
1. まず確認する場所
- 規格とクラス:どの規格・版・機器クラス(AまたはB)・試験距離の限度値が使われたかを確認します。クラスAの結果をクラスBの主張に使うことはできません。
- 試験構成:動作モードと、接続したケーブル・ポートを確認します。報告書は試験した構成についてのみ述べています。
- 機器・校正リスト:アンテナ、LISN、レシーバ、ケーブルと、それぞれの校正日を確認します。
- 周囲雑音スキャン:放送・通信信号によるピークとEUTによるピークを見分ける根拠になります。
2. 結果表を列ごとに読む
| 列 | 意味 |
|---|---|
| 周波数 | スキャンで見つかったエミッションの周波数 |
| 読み値 | レシーバが読み取った生の値(例:dBµV) |
| 補正係数 | 放射:アンテナ係数 + ケーブル損失 + アッテネータ − プリアンプ利得。伝導:LISN係数 + ケーブル損失 |
| 補正後レベル | 読み値 + 補正係数。限度値と比較する値です |
| 限度値 | その周波数における、検波器・クラス・距離ごとの限度値 |
| マージン | 限度値 − レベル。正なら限度値より低いことを意味します |
| 検波器 | QP(準ピーク)またはAV(平均)。検波器ごとに別の限度値があります |
| 偏波・高さ・角度 | 放射試験のみ:最大値が得られたアンテナとターンテーブルの位置 |
3. 限度値の線の読み方
- 限度値は1つの数字ではなく、周波数の関数です。放射試験では帯域の境界で線が階段状に上がります。例:クラスB・10 m法では、30–230 MHzが30 dB(µV/m)、230–1000 MHzが37 dB(µV/m)です。
- 電源ポートの伝導限度値は、低周波側で周波数の対数に沿って下がります。クラスBのQPは0.15–0.5 MHzで66から56 dBµV、平均は56から46 dBµVです。最も近い平坦な部分ではなく、その周波数ちょうどの限度値を読んでください。
- QPと平均には別々の限度値の線があり、平均の線のほうが低くなっています。QPに合格しても平均で不合格になることがあります。
- 距離を確認してください。3 mと10 mの限度値は異なります(クラスB・230–1000 MHz:3 mで47 dB(µV/m)、10 mで37 dB(µV/m))。距離間の換算は目安であり、判定は実際の試験距離の限度値で行います。
4. 計算例
以下の数値は計算の流れを示すために作った架空の値で、実測値ではありません。クラスB機器、電源ポート、0.5 MHzでの最終測定です。
| 検波器 | レベル (dBµV) | 限度値 (dBµV) | マージン (dB) | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| QP | 52.0 | 56 | 4.0 | 合格 |
| 平均 | 47.1 | 46 | −1.1 | 不合格 |
QPのマージンには余裕があるように見えますが、平均のマージンがマイナスなので、この周波数では不合格です。必ずすべての検波器を確認してください。
5. マージンはどれくらいあれば十分か
- マージン = 限度値 − レベル。正なら限度値より下、負なら超過です。
- 測定の不確かさより小さい正のマージンは、適合の証明にはなりません。拡張不確かさを含めたマージンが負なら、読み値は限度値より下でも真値は限度値を超えている可能性があります。(計算機:限度値に対するマージン、合成不確かさ)
- 読み値をそのまま比較するか、不確かさを加えて比較するかは、CISPR 16-4-2の不確かさの基準と認証機関の方針に従います。報告書がどの規則を使っているか、試験所に確認してください。
- 設計では、試験所間のばらつきを吸収できるよう最低3–6 dBのマージンを目標にし、3 dB未満の項目は対策候補として印を付けます。
6. 読み方でよくある間違い
- 単位の混同:dBµVはdBµVと、dB(µV/m)はdB(µV/m)と比較します。補正前のレシーバの読み値を電界強度の限度値と比較してはいけません。(計算機:dBµV ↔ V、dBµV/m ↔ V/m)
- グラフの最大ピークだけを見る:グラフはピーク検波のプリスキャンであることが多く、判定は最終のQP・平均の表で行われます。
- 試験モードの見落とし:あるモードで合格しても、より厳しいモードまで保証するわけではありません。
- 設計変更後に報告書を使い回す:配置・ケーブル・ファームウェアが変わると、再評価が必要になることがあります。
このガイドは一般的な参考資料です。報告書の書式は試験所によって異なります。認証に使う判定は、公式の規格と認証機関の方針に従ってください。
関連する計算ツール
計算結果と要約は参考情報です。認証や試験成績書には、最新の規格原文と校正済み機器の値を使用してください。