dBm・W・dBµV:混同しやすい単位の整理
dBm、dBW、W、dBµV、dB(µV/m)の関係、50 Ωで107 dBの差が出る理由、そして単位を取り違えやすい場面を計算例で解説します。
EMC試験の現場では、1つの画面にdBm、dBµV、dB(µV/m)が並び、データシートにはWやdBWが書かれています。名前が似ているため、変換を1回間違えるだけで結果が数dB、ときには数十dBもずれます。本ガイドでは、各単位が何を表すか、相互の変換方法、間違えやすいポイントを計算例とともに説明します。
1. 各単位が表すもの
| 単位 | 量 | 基準 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| dBW | 電力 | 1 W | 送信機の定格、リンクバジェット |
| dBm | 電力 | 1 mW | RF計測器、信号発生器 |
| dBµV | 電圧(RMS) | 1 µV | EMI受信機、伝導エミッション |
| dB(µV/m) | 電界強度 | 1 µV/m | 放射エミッションの限度値 |
| dB | 比 | なし | 利得、損失、マージン |
2. 基本の式
- dBm = 10·log₁₀(P / 1 mW)、P(mW) = 10^(dBm/10)。0 dBmは1 mW、30 dBmは1 Wです。
- dBW = dBm − 30。同じ電力をdBWで表すと、数値は30小さくなります。
- dBµV = 20·log₁₀(V / 1 µV)。電力は電圧の2乗に比例するため、係数は10ではなく20です。
- 電圧と電力は P = V² / R で結ばれます。50 Ωでは dBm = dBµV − 107、75 Ωでは dBm = dBµV − 108.75 です。
- 107の由来:50 Ωにかかる1 µVは (10⁻⁶)² / 50 = 2×10⁻¹⁴ W = −137 dBW = −107 dBm です。
3. 計算例:信号発生器から受信機まで
信号発生器が50 Ω負荷に0 dBmを出力します。電力は1 mW、電圧は V = √(P·R) = √(0.001 × 50) = 0.2236 V です。dBµVにすると 20·log₁₀(0.2236 / 10⁻⁶) = 106.99 dBµV で、四捨五入すると107 dBµVになります。近道の式 dBm + 107 と一致します。
| dBm | 電力 | dBµV (50 Ω) |
|---|---|---|
| −30 | 1 µW | 77 |
| 0 | 1 mW | 107 |
| 10 | 10 mW | 117 |
| 20 | 100 mW | 127 |
| 30 | 1 W | 137 |
(計算ツール:dBm ↔ W、dBm ↔ dBµV)
逆方向も見てみましょう。5 Wの送信機は5000 mWなので、10·log₁₀(5000) = 36.99 dBm、dBWでは6.99 dBWです。50 Ωでは 36.99 + 107 = 143.99 dBµV、電圧は √(5 × 50) = 15.8 V です。
スペクトラムアナライザを使うプリコンプライアンスでも同じ変換が必要です。50 Ωでアナライザが−59 dBmを表示した場合、レベルは −59 + 107 = 48 dBµV、電圧は 10^(48/20) = 251 µV です。伝導エミッションの限度値はdBµVで書かれているため、先に変換してから比較します。
| dBµV | 電圧 |
|---|---|
| 0 | 1 µV |
| 20 | 10 µV |
| 40 | 100 µV |
| 60 | 1 mV |
| 80 | 10 mV |
| 120 | 1 V |
電圧の変換はインピーダンスに依存しません。インピーダンスが必要になるのは電力に変換するときだけです。(計算ツール:dBµV ↔ V)
4. 単位を混同しやすい場面
- dBmとdB:dBmは絶対電力、dBは比です。20 dBmに3 dBの利得を加えると23 dBmです。しかし20 dBmの信号を2つ足しても40 dBmにはならず、無相関ならば合計は23 dBmです。1 W + 1 W = 2 Wなので、30 dBm + 30 dBm = 33 dBm です。(計算ツール:dBレベル合算)
- 10と20:電力には10·log、電圧や電界には20·logを使います。電圧が2倍なら+6 dB、電力が2倍なら+3 dBです。
- dBmとdBW:30の差があります。データシートがdBWかdBmかを確認しないと、結果が30 dBずれます。
- インピーダンス:107というオフセットは50 Ωでのみ有効です。75 Ω系で使うと1.75 dBの誤差になります。
- dBµVとdB(µV/m):前者は受信機入力の電圧、後者はアンテナ位置の電界強度です。アンテナファクタ(AF)とケーブル損失が両者をつなぎます:E (dBµV/m) = V (dBµV) + AF (dB/m) + ケーブル損失 (dB)。例:30 dBµV + AF 12 dB(1/m) + ケーブル2 dB = 44 dB(µV/m)。(計算ツール:dBµV/m ↔ V/m)
- 検波器:同じ信号でも、EMI受信機のピーク、準尖頭値、平均値の読みは異なります。限度値と比較するときは、限度値が指定する検波器を使います。
5. 変換ミスを見つける習慣
- 基準点を1つ覚えておきます:50 Ωで0 dBm = 107 dBµV。結果が大きくずれていたら、まず単位を疑います。
- 逆変換して元の値に戻るか確認します。
- 表の数値には、単位とインピーダンスを必ず併記します。数値だけを書き写すと、後から解釈できなくなります。
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計算結果と要約は参考情報です。認証や試験成績書には、最新の規格原文と校正済み機器の値を使用してください。