VSWRと反射減衰量:実務の基準値と換算

VSWR、反射減衰量、反射係数、反射電力、ミスマッチ損失の関係を、換算表、実務でよく使う値、ケーブル損失の落とし穴とともに解説します。

公開日: 2026-11-03 · 最終更新: 2026-11-04

VSWRと反射減衰量は、インピーダンスが合わない場所で信号がどれだけ戻ってくるかを、2通りで表したものです。データシートにはどちらか一方しか書かれていないことが多いため、換算が必要になります。本ガイドでは、式、換算表、計算例、実務で見かける基準値を紹介します。

1. 定義と式

  • 反射係数 Γ = (ZL − Z0) / (ZL + Z0)。Z0は基準インピーダンス(通常50 Ω)、ZLは負荷です。
  • VSWR = (1 + |Γ|) / (1 − |Γ|)、逆に |Γ| = (VSWR − 1) / (VSWR + 1) です。
  • 反射減衰量 RL = −20·log₁₀|Γ| (dB)。正の数で表し、大きいほど反射が小さいことを意味します。S11 (dB) = −RL です。
  • 反射電力の割合 = |Γ|²。ミスマッチ損失 = −10·log₁₀(1 − |Γ|²) (dB)。

2. 換算表

VSWRRL (dB)|Γ|反射電力ミスマッチ損失 (dB)
1.1126.00.0500.3%0.011
1.2220.00.1001.0%0.044
1.5014.00.2004.0%0.18
1.9210.00.31610.0%0.46
2.009.50.33311.1%0.51
3.006.00.50025.0%1.25

(計算ツール:VSWR ↔ 反射減衰量 ↔ 反射係数)

3. 計算例:50 Ω系に75 Ωの負荷を接続

Γ = (75 − 50) / (75 + 50) = 0.2。VSWR = 1.2 / 0.8 = 1.5、RL = −20·log₁₀(0.2) = 13.98 dBで、約14 dBです。反射電力は 0.2² = 4%、ミスマッチ損失は −10·log₁₀(1 − 0.04) = 0.18 dB です。

電力で見ると、10 Wの送信機がVSWR 2:1のアンテナに接続された場合、反射電力は 10 × 0.111 = 1.11 W、アンテナに届くのは8.89 Wです。損失は 10·log₁₀(8.89 / 10) = −0.51 dB で、表のミスマッチ損失と同じです。

4. 実務で使われる基準値

  • VSWR 2:1(RL約9.5 dB)は、アンテナ仕様の許容限界としてよく記載される値です。電力の約11%が反射し、損失は約0.5 dBです。
  • VSWR 1.5:1(RL約14 dB)は、より厳しい仕様でよく見られます。
  • VSWR 1.22(RL 20 dB)より小さい領域では反射はすでに約1%で、さらに改善しても損失の低減は0.05 dB未満です。改善の効果は小さくなっていきます。
  • これらの値は設計上の慣習であり、CISPRなどのEMC規格が定める限度値ではありません。製品やアンテナの仕様書、試験計画書の要求に従ってください。

5. ケーブル損失はミスマッチを隠す

ケーブル入口で測定した反射減衰量は、アンテナ自体のRLにケーブル損失の2倍(信号が往復するため)を加えた値です。アンテナのRLが6 dB(VSWR 3.0)で、損失3 dBのケーブル越しに測ると、6 + 2×3 = 12 dB、VSWRでは約1.67に見えます。判断する前に、アンテナ端子で測定するか、ケーブル損失を補正してください。

ミスマッチは測定の不確かさにも現れます。両側の反射係数を |Γ1| と |Γ2| とすると、ミスマッチ誤差は 20·log₁₀(1 ± |Γ1|·|Γ2|) dB の範囲に収まります。例えば、VSWR 1.5(|Γ| = 0.2)とVSWR 1.22(|Γ| = 0.1)を接続すると、積は0.02となり、誤差は+0.17 dBから−0.18 dBの間になります。これを不確かさバジェットにどう入れるかは、該当規格と試験所の方法に従います。(計算ツール:合成不確かさ)

6. よくある間違い

  • 符号:RLは通常、正の数(10 dB)で、S11は負の数(−10 dB)で書きます。値は同じで、符号だけが異なります。
  • ミスマッチ損失を反射減衰量と読み違える:反射減衰量10 dBに対応するミスマッチ損失は0.46 dBにすぎません。
  • 1つの周波数だけを見る:仕様は使用帯域全体で満たす必要があるため、帯域内の最悪値を確認します。
  • VSWRは1より小さくなりません。1未満の値が出たら、入力や単位を確認してください。

7. 値を受け取ったときの確認事項

  • その数値がVSWRかRLか、またどの符号の慣習を使っているかを確認します。
  • 基準面がアンテナ端子か、ケーブルの端かを確認します。
  • 表または計算ツールで反射電力とミスマッチ損失を求め、リンクバジェットに含めるかどうかを判断します。
  • 使用帯域全体での最悪値を使って、仕様と比較します。
本ガイドは一般的な参考資料です。実際の仕様と合否基準は、製品仕様書、該当規格、試験所の要求に従ってください。

関連する計算ツール

計算結果と要約は参考情報です。認証や試験成績書には、最新の規格原文と校正済み機器の値を使用してください。