VSWRと反射減衰量:実務の基準値と換算
VSWR、反射減衰量、反射係数、反射電力、ミスマッチ損失の関係を、換算表、実務でよく使う値、ケーブル損失の落とし穴とともに解説します。
VSWRと反射減衰量は、インピーダンスが合わない場所で信号がどれだけ戻ってくるかを、2通りで表したものです。データシートにはどちらか一方しか書かれていないことが多いため、換算が必要になります。本ガイドでは、式、換算表、計算例、実務で見かける基準値を紹介します。
1. 定義と式
- 反射係数 Γ = (ZL − Z0) / (ZL + Z0)。Z0は基準インピーダンス(通常50 Ω)、ZLは負荷です。
- VSWR = (1 + |Γ|) / (1 − |Γ|)、逆に |Γ| = (VSWR − 1) / (VSWR + 1) です。
- 反射減衰量 RL = −20·log₁₀|Γ| (dB)。正の数で表し、大きいほど反射が小さいことを意味します。S11 (dB) = −RL です。
- 反射電力の割合 = |Γ|²。ミスマッチ損失 = −10·log₁₀(1 − |Γ|²) (dB)。
2. 換算表
| VSWR | RL (dB) | |Γ| | 反射電力 | ミスマッチ損失 (dB) |
|---|---|---|---|---|
| 1.11 | 26.0 | 0.050 | 0.3% | 0.011 |
| 1.22 | 20.0 | 0.100 | 1.0% | 0.044 |
| 1.50 | 14.0 | 0.200 | 4.0% | 0.18 |
| 1.92 | 10.0 | 0.316 | 10.0% | 0.46 |
| 2.00 | 9.5 | 0.333 | 11.1% | 0.51 |
| 3.00 | 6.0 | 0.500 | 25.0% | 1.25 |
(計算ツール:VSWR ↔ 反射減衰量 ↔ 反射係数)
3. 計算例:50 Ω系に75 Ωの負荷を接続
Γ = (75 − 50) / (75 + 50) = 0.2。VSWR = 1.2 / 0.8 = 1.5、RL = −20·log₁₀(0.2) = 13.98 dBで、約14 dBです。反射電力は 0.2² = 4%、ミスマッチ損失は −10·log₁₀(1 − 0.04) = 0.18 dB です。
電力で見ると、10 Wの送信機がVSWR 2:1のアンテナに接続された場合、反射電力は 10 × 0.111 = 1.11 W、アンテナに届くのは8.89 Wです。損失は 10·log₁₀(8.89 / 10) = −0.51 dB で、表のミスマッチ損失と同じです。
4. 実務で使われる基準値
- VSWR 2:1(RL約9.5 dB)は、アンテナ仕様の許容限界としてよく記載される値です。電力の約11%が反射し、損失は約0.5 dBです。
- VSWR 1.5:1(RL約14 dB)は、より厳しい仕様でよく見られます。
- VSWR 1.22(RL 20 dB)より小さい領域では反射はすでに約1%で、さらに改善しても損失の低減は0.05 dB未満です。改善の効果は小さくなっていきます。
- これらの値は設計上の慣習であり、CISPRなどのEMC規格が定める限度値ではありません。製品やアンテナの仕様書、試験計画書の要求に従ってください。
5. ケーブル損失はミスマッチを隠す
ケーブル入口で測定した反射減衰量は、アンテナ自体のRLにケーブル損失の2倍(信号が往復するため)を加えた値です。アンテナのRLが6 dB(VSWR 3.0)で、損失3 dBのケーブル越しに測ると、6 + 2×3 = 12 dB、VSWRでは約1.67に見えます。判断する前に、アンテナ端子で測定するか、ケーブル損失を補正してください。
ミスマッチは測定の不確かさにも現れます。両側の反射係数を |Γ1| と |Γ2| とすると、ミスマッチ誤差は 20·log₁₀(1 ± |Γ1|·|Γ2|) dB の範囲に収まります。例えば、VSWR 1.5(|Γ| = 0.2)とVSWR 1.22(|Γ| = 0.1)を接続すると、積は0.02となり、誤差は+0.17 dBから−0.18 dBの間になります。これを不確かさバジェットにどう入れるかは、該当規格と試験所の方法に従います。(計算ツール:合成不確かさ)
6. よくある間違い
- 符号:RLは通常、正の数(10 dB)で、S11は負の数(−10 dB)で書きます。値は同じで、符号だけが異なります。
- ミスマッチ損失を反射減衰量と読み違える:反射減衰量10 dBに対応するミスマッチ損失は0.46 dBにすぎません。
- 1つの周波数だけを見る:仕様は使用帯域全体で満たす必要があるため、帯域内の最悪値を確認します。
- VSWRは1より小さくなりません。1未満の値が出たら、入力や単位を確認してください。
7. 値を受け取ったときの確認事項
- その数値がVSWRかRLか、またどの符号の慣習を使っているかを確認します。
- 基準面がアンテナ端子か、ケーブルの端かを確認します。
- 表または計算ツールで反射電力とミスマッチ損失を求め、リンクバジェットに含めるかどうかを判断します。
- 使用帯域全体での最悪値を使って、仕様と比較します。
関連する計算ツール
計算結果と要約は参考情報です。認証や試験成績書には、最新の規格原文と校正済み機器の値を使用してください。